新聞のお悩み相談コーナーで、高校生の男の子が不倫している母親への向き合い方を相談し、上野千鶴子先生が回答している記事を、Twitterで読みました。スレッド追ったのですが、元の新聞がいつどこの記事なのかは把握できず…すみません。それについて思う所があったので、今回はそれを書いていきます。
相談の概要
そもそもどんな内容だったのか、ざっくりまとめます。相談者は男子高校生で、細かい年齢設定はありませんでした。今時、新聞に相談を送る高校生がいるなんて、そっちも驚きです。きっと真面目な子なんでしょうね。
- 母が不倫をしているようだ
- 「同窓会」と言って毎月外出(GPSでラブホテルに行っていたことがわかる)
- 両親の夫婦関係はずっと前から冷え切っている
- 母は真面目で厳しく、優しい女性
- 息子として母に迷惑かけた→心労につながったのかも
- 父は何にも気づいていない
- 母は何食わぬ顔で毎回帰宅、裏切られたようで悲しい
- 今後母とどう向き合えばいいのか
という相談内容でした。それに対し上野先生の回答は
- 父にとって母はどうでもいい人、無関心は愛の不在
- そんな母にどうでもよくない人が現れたのを祝福してあげては?
- 家族が解体すれば、もっとも被害を受けるのは子ども
- 特に息子は母が「女」になることを認めたくないものだ
- 母が隠し通しているのは、家庭を壊したくないから
- 母に「女」を封印せよという権利は息子にもない
- 苦しいでしょうが、母をひとりの女性として認めてあげてください
- 母が懸命に秘密にしているものを守ってあげてください
- 今問い詰めたらかえって家族を壊すことになる
というものでした。
先に述べておくと、私は高校生の頃から上野先生が大好きですし、思想的にもまあまあ(?)フェミニストだと思いますが、今回はあえて異論を唱えたいと思います。私のような小者が発言しても別にどうってことはないですが、私だったらこうお返事するかな…というのを自由に書きました。
上野先生のアドバイスについて思うこと
Twitter上では不倫容認してて気持ち悪いとか、男女逆なら(父親だったら)そんな結論にならんだろ、って意見がありました。
私はわかる部分もあるけど、やっぱりなんか違う、というか、一番強く思うのは
「この相談者の男の子、これじゃ全く救われないよなあ~」
っていうことです。不倫しているママ本人にとっては、きっと先生のアドバイスは喜ばしいものですよね。自分の言動にOK出してもらっているようなものですから。
私のクライアントさんにも、お子さんがいながら不倫している(いた)ママさんたちがいます。女性の方が器用なのか、男性が鈍感なのか、ばれずに数年「婚外恋愛」を楽しんで、終わらせている方が多い印象です。夫にはもう愛がないし、別れてもいいけど、子どものために離婚はしない、というセリフは、不倫した側からもされた側からも聞きます。
「子はかすがい」ということわざがありますが、私はどちらかと言えば「子は漬物石」って感じで、夫婦が家族でいるための「重し」のような存在になっていると思っています。そしてこの「重し」が、再構築か離婚かの選択で、ポジティブにもネガティブにも働きます。
上野先生は持論として不倫容認派、というか、「そもそも一人のパートナーと死ぬまで恋愛し続けるなんて無理」というお立場だと思います。亀山早苗さんの著書「人はなぜ不倫するのか」(SB新書)の対談で、そのように答えていらっしゃいました。
今回のお母さんのように、まだ40代の女性なら、他で恋愛しても仕方ない、というか、あって当然だ、というご意見なんですよね。なので、「女としてのお母さんを認めてあげてください」と、息子さんに理解を求めているのだと思います。
私はこの辺にちょっと違和感があります。
そもそも、女として認めてあげる=性欲の解放を許すこと、なんでしょうか?
不倫なんかしなくても、男性にとって性的な対象じゃなくても、女性は女性ですよね。メイクやファッションなど、女性らしいおしゃれを楽しむのも十分「女」ではないのでしょうか。私もそういったブログや動画が大好きですが、あくまでも自分が楽しいからで、夫の目を気にしたり、ましてや「きれいになって不倫するぞー!」なんて思いません。
また、シングルマザーが恋愛するのは自由です。夫のいない母が、新しいパートナーを見つけた場合は、多少葛藤はあっても子どもとしてはまだ受け入れられると思います。それと比較して、冷え切っているとはいえ、父という夫がいながらの別のパートナーに浮足立っている母親を認めてあげる、というのは、かなりハイレベルというか、達観していないと難しいと思うんですよね。
新聞に悩み相談するほど、母親が子どもを混乱に陥れているのは確かなのです。文面からも、自分のせいで心労がたたったのかも、と、自分を責めている様子がうかがえて、とても切なくなります。
さらに言えば、不倫は連鎖します。母(父)が不倫していた、となると、それをモデルにしてしまい、自分も結婚後不倫をしてしまったり、されてしまうケースが、とても多いのです。不倫が連鎖すれば、不倫された子どもの悩みは、当然次の子どもに連鎖するのです。
以上のことから、私は別視点で彼に勝手にアドバイスしたいと思います。
もし私だったらこう返事したい
まずは、お母さんの不倫はお母さんの責任であり、あなたのせいじゃない、ということを、声を大にして言いたいです。
文面から察すると、お母さんはお父さん(夫)との希薄な関係を埋めるように、あなたと距離を縮めていたのかと思います。もっと言えば、これは妄想の範囲になりますが、あなたが悪さをすればするほど、お母さんはそっちにエネルギーを向けることができ、変なバランスがとれていたのかもしれません。そんなあなたが高校生になって、落ち着いて自立の道を歩み出したため、お母さんは急にぽっかり穴が開いたようになってしまった。それが不倫につながったのではないでしょうか。
でも、安心してください。あなたのお母さんは、ちゃんとあなたのお母さんです。お母さんの裏の顔を見たようで、何も信じられなくなっているかもしれませんが、これはあくまでも「裏の顔」です。私はいつも、不倫中の人を「妖怪に憑りつかれた人」と例えています。お母さんには今、妖怪が憑りついているのだと思ってください。必ず正気に戻ります。
上野先生は何も言わずに見守って、何か言えば家族は壊れてしまう、とおっしゃっていますが、私はとっくに家族は壊れていると思います。あなたがいるおかげで、なんとか家族のていを保っているんです。
私はお母さんに率直に話すことを勧めます。ド直球です。
証拠は押さえておく方がいいですね。何バカなこと言ってるの、と言われるのがオチなので。ポイントは、あなたが不倫していると僕は辛い、苦しいと、自分の気持ちを伝えることです。もうやめてほしい。別れてくれるならお父さんには言わない。息子からそう言われれば、真面目なお母さんなら必ずやめてくれるはずです。
ご両親が夫婦でカウンセリングを受けてくれたら、なおいいですね。
あなたがお考えのとおり、夫婦関係に根っこの問題がありそうですよね。お母さんが今不倫をやめても、問題がそのままなら、また別の人と、なんてことも起きかねません。夫婦の問題は夫婦で決めるべきことで、子どもからは口出しできない部分ではありますが、まだこの家族でいるつもりなら、二人ともしっかり向き合ってほしい、と相談を促すのはいいと思いますよ。(本当は大人が自分で考えなきゃいけないですけどね。)
上野先生は家族よりも個人の幸せが優先されるべき、とお考えだと思います。それは私もそう思います。誰かの我慢で成り立つ家族関係なんて辛いですから。
でも、個人の幸せを優先しても、家族でも幸せでいることはできます。家族でいることをあきらめなくてもいいんです。
念のため言っておきますが、基本的には不倫の問題をお子さんに介入させるのはよくないと思っています。今回は息子さんとお母さんとのやり取りだということと、息子さんの年齢や相談できる力を考慮してこのような返事を考えました。
このご夫婦には、息子さんの思いに誠実に応えてほしいなと思います。
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